胃の中のピロリ菌を除菌すればさまざまな慢性症状が改善していく

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消化器とは関係ない症状が治る

慢性的な頭痛やじんましん、貧血、めまいなどは、どんな治療を行っても治らないケースが少なくありません。しかし、こうしたケースも、胃の調子を整えると消えることがあります。神経内科や皮膚科に行っても治らない病気が、胃炎を治すことで、ウソのように治ってしまうのです。

そんなとき、栃木市江田クリニックの患者さんは、江田証先生に向かって不思議そうに問いかけます。

「なぜ先生は、消火器の先生なのに、消化器とは関係のない私の症状が治せたのですか」

しかし、こういうことが起こるのは、不思議でもなんでもないのです。

胃は、食べ物をかみ砕く、ただの筋肉装置ではありません。胃は、体の一部分というだけではなく、全身の健康に深くかかわっています。

胃が悪いとボケやすい

日本人の約6割にある胃炎は、幼少時に感染したピロリ菌によって引き起こされ、慢性化するのです。

ピロリ菌によって引き起ごされる慢性胃炎は、除菌されないと、徐々に悪化し、胃をむしばんでいきます。これがのちのち、胃ガンを引き起こす原因になりますが、胃炎による悪影響は、それだけにとどまりません。

胃が悪いと、ボケやすいこともわかっています。胃は脳と密接に関係しているのです。アルツハイマー型認知症の人を調査すると、「胃炎あり」という人が88%に達していました。アルツハイマー型認知症でない人では、「胃炎あり」の人は46・7%ですから、大きな差があることがわかります。

胃炎があると、認知症になる確率は2倍近くにもなるのです。

また、パーキンソン病という脳神経の病気があります。手が震えたり、歩行が小刻みになつたり、寝たきりになったりすることが多い病気です。胃炎がある人は、ない人よりもパーキンソン病の症状がよくなりにくいこともわかっています。

ほかにも、胃炎が原因で、鉄欠乏性貧血が起こることもあります。これはピロリ菌が、本来、人が必要としている鉄を食べてしまうことで起こる病気です。

さらに、血小板減少性紫斑病(血小板の数が異常に少なくなって出血しやすくなる病気)なとの、血液の病気も起こりやすくなるのです。

胃潰瘍を治したら認知症患者に笑顔出現

ここで、まず大切なのは、胃炎を治すことです。そのためには、胃炎の原因であるピロリ菌を除菌することが欠かせません。抗生物質によってピロリ菌を除菌し、胃炎が治ると、今、取り上げてきたような、さまざまな症状が改善していくのです。

胃炎を治療して、2年経過すると、認知機能が明らかに改善することが報告されています。また、鉄の吸収もよくなりますから、その後いっさい、鉄剤に頼らなくなる人もいます。頭痛、じんましん、めまいなど原因不明の慢性症状も、その実の原因が胃炎であった場合、胃炎が改善されれば、ウソのように治っていきます。

さらに、ピロリ菌が引き起こす慢性胃炎のような炎症があると、血液はドロドロになって、悪玉コレステロール値が上昇し、善玉コレステロール値が低下します。

そして、全身の動脈硬化が進行すれば、さらに炎症も悪化し、血液はさらにドロドロになるという悪循環が続きます。

除菌して慢性胃炎を改善することは、こうした悪循環を断ち切り、さまざまな生活習慣病の予防・改善に役立つのです。

さまざまな慢性症状が改善していく

江田クリニックに来院した、75歳の女性の例をお話しします。来院時、このかたは、すでに認知症がかなり進行していて、表情がなく、顔つきは能面のようでした。私のところには認知症の治療ではなく、胃潰瘍の治療に見えたのです。

ところが、胃の状態を整え、潰瘍を治したところ、認知症が明らかによくなってきました。能面のようだった顔に表情が生まれ、笑うようにさえなったのです。

このように今までの治療では、どうも治らないと思っていた症状であっても、胃炎を治すことで劇的によくなるケースが少なからずあるのです。

これまで、日本では、潰瘍がない慢性胃炎の患者さんは、ピロリ菌の除菌を健康保険で行うことができませんでした。しかし、2013年2月から、健康保険を使って、潰瘍のない胃炎の患者さんでも、除菌ができるようになったのです。

日本人の2人に1人以上の確率でピロリ菌に感染しているのですから、あなたの胃にも、ピロリ菌がいるかもしれません。

胃の中のピロリ菌を除菌すれば、胃炎がなくなり、胃ガンにかかるリスクを大幅にへらすことができます。それと同時に、今まで悩まされてきた、さまざまな慢性症状が改善していくことも、じゅうぶん期待できるのです。

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