脳の異常な興奮によって耳鳴りやめまい、不眠などを引き起こす「脳過敏症候群」

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耳鳴り・めまいの原因は別のところにあった

耳鳴りやめまいが起こったら、多くの人は耳鼻咽喉科を受診するでしょう。そして、医師からなんらかの病名を告げられ治療が始まります。ところが、治療を続けても症状が改善せずに苦しんでいる人がおおぜいいます。なぜでしょうか。

脳神経外科の専門医である、東京女子医科大学客員教授の清水俊彦先生が長年研究を続けてきた結果、耳鼻咽喉科の治療で改善しない耳鳴りやめまいは、内耳の機能障害が原因というよりも、実は脳の異常な興奮状態に起因しているケースが圧倒的に多いことがわかってきました。

つまり、原因の違う治療を受けていたため、耳鳴りやめまいが改善されなかったのです。

脳の異常な興奮によって起こる耳鳴り(専門的には頭鳴という)やめまいには、ある特徴があります。

まず、耳鳴り(頭鳴)は、片側だけでなく、左右両耳に起こる場合がほとんどです。というよりも、「頭の中で誰かが太鼓をたたいている感じ」「頭の中でセミが鳴いている感じ」など、耳というよりは頭の中で雑音が鳴っていると感じる患者さんが多くいます。

一方のめまいについては、体がフワフワとふらつく浮動性のめまいがよく起こります。めまいとともに吐きけがすることも少なくありません。

さらに、不眠やイライラなど、「性格のせい、年のせい」と思い込んでしまうような症状を併発する場合もあります。

清水先生は、このような脳の異常な興奮によって耳鳴り(頭鳴)やめまい、不眠などが起こる病態を「脳過敏症候群」と名づけ、専門的な治療を行っています。その結果、長年苦しんだ耳鳴り(頭鳴)やめまいが、顕著に改善する例が続出しています。

脳過敏症だと脳波の波形が乱れる

清水先生が研究を進めるうちに、脳過敏症候群の患者さんには共通した特徴があることにも気づきました。それは、現在または過去に、片頭痛に悩んでいた人に多く見られるということです。

実際に、脳過敏症候群の患者さんの脳波を調べると、健康な人との差は一目瞭然です。脳波とは、脳の神経細胞どうしで行われる情報交換を読み取り、電気信号で表したものです。

健康な人の脳波は、強弱を規則正しくくり返す波形になっていますが、耳鳴り(頭鳴)やめまいを訴える片頭痛の患者さんの場合は規則性のない乱れた波形になっており、脳が興奮状態に陥っています。

脳波の波形が乱れている人は、典型的な脳過敏症候群と診断でき、耳鳴り(頭鳴)やめまいの原因は、脳の異常な興奮にあると考えてほぼ間違いありません。

片頭痛に対する誤った対応が元凶

先ほども述べたように、脳過敏症候群は、過去に片頭痛に悩んでいた人に多く見られます。

片頭痛では、こめかみから目のあたりがズキンズキンと脈打つように痛み、光や音が苦痛になるほか、めまいや吐きけなどの重い症状が現れます。

片頭痛の原因として現在有力祝されているのが、セロトニンの調節障害による脳血管の異常な拡張です。脳の血管は収縮・拡張をくり返して血流量を一定に保っています。

このとき脳が過剰なストレスなどにより刺激を受けると、血液中の血小板(主に血液を固める働きをする)からセロトニンという神経伝達物質が一気に分泌され、大量に分泌されたセロトニンに反応して脳血管が収縮します。

しかし、セロトニンが一時的に出尽くすと、今度はその反動で血管が急激に拡張して脳の血管の周囲に張り巡らされている三叉神経が刺激を受けます。すると、刺激を受けた三叉神経から炎症物質が放出され、その情報が大脳に伝わり、片頭痛の痛みが現れてくるのです。

こうした状態を放置すると、やがて脳が興奮状態に陥りやすくなります。脳の興奮とは、脳の神経細胞間(シナプス)を通して送られる電気店号がショートを起こしている状態です。

一般に、片頭痛のようなつらい痛みが現れると、市販の頭痛薬(NSA-D5など)で痛みを和らげようとする人が多いと思います。ところが、市販の頭痛薬では、表面的な痛みを取り除けても脳の興奮状態は放置されたままになります。

そして、くり返し起こる片頭痛に対して脳の興奮を鎮める対処がそのつどなされないと、脳の興奮はますます高まり、やがて少しの刺激でも興奮しやすくなります。ついには、脳の働きに混乱が生じて耳鳴り(頭鳴)やめまい、不眠などの不快な症状が現れてくるのです。

つまり、片頭痛への長年の不適切な対応が、脳過敏症候群を招く原因となるのです。

ただし、今現れている症状のみで、脳過敏症候群に陥っているかどうかを判断することはできません。脳過敏症候群の診断には、脳の興奮状態を粛べる脳波検査が有用です。耳鼻咽喉科で治療を受けても、耳鳴り(頭鳴)やめまいが治らない人は、脳神経外科で脳波検査を受けてみることをおすすめします。

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