みそ汁は高血圧を予防する?

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日本人の食塩摂取量はまだ多い

高血圧には、食塩の摂取量が多くなると血圧が上がる「食塩感受性高血圧」と、摂取量を増減しても血圧の変化が少ない「抵抗性高血圧」があります。

日本人の場合、高血圧の人の50~60%が、食塩感受性高血圧といわれます。この高血圧は、もう一方のタイプに比べて、脳卒中や腎臓病などの臓器障害の発症率が高いので、問題視されています。

そのため、厚生労働省では食塩の摂取量の基準を、健康な男性で1日9g未満、女性で7・5g未満と定めています。

日本人の食塩摂取量は近年かなり減少してはいるものの、男性で1日平均11・4g、女性で9・6gと、まだ基準よりも多いのが現状です。高血圧が心配な人や健康に気を使う人は特に、塩分の多い食品を控えるよう注意していることも、多いでしょう。

ラットを用いた実験でみその減塩効果を確認

みそはしょうゆと並び、日本人の食事が塩分過多になる要因の一つと目されてきました。事実、みそには総重量の10~13%程度の食塩が含まれており、おわん1杯のみそ汁を飲むと、約1gの食塩を取ることになります。食塩量だけを聞くと、みそ汁を敬遠したくなるかもしれません。

しかし、大豆の発酵食品であるみそには、さまざまなよい成分が含まれています。また、みそに含まれる食塩は、本当に血圧に悪影響を及ぼすのか、詳しく調べた研究はこれまでほとんどありませんでした。

そこで共立女子大学教授の上原義雄先生たちは、ヒトの食塩感受性高血圧と同じように、食塩を与えると血圧が上がる性質のラットを用いて、次のような実験を行いました。

塩分濃度1・3%のみそ汁を約2カ月間飲ませたラットと、同じ濃度の食塩水を飲ませたラットを比較します。

どちらのグループのラットも、日を追うにつれて徐々に血圧が上がっていきました。しかし、みそ汁を飲んだラットの血圧は、食塩水のラットの血圧を常に下回っていました。

そして、実験終了時のラットの血圧を比較すると、みそ汁を飲んだラットは合計で約48gの食塩を摂取したにもかかわらず、食塩水のラットが32gの食塩を摂取したときの血圧とほぼ同じだったのです。

血圧に及ぼす影響で見ると、同量の食塩を取る場合と比較して、みそには約30%の「減塩効果」があるといえます。つまり、約30%分の減塩に相当する、血圧下降効果があるというわけです。

みそ汁は尿作用が強い

こうした減塩効果がもたらされた理由の一つに、みそ汁は同じ濃度の食塩水よりも利尿作用(尿の出をよくする働き)が強いことが挙げられます。

みそ汁を飲んだラットのほうが尿の出がよくなったため、腎臓から水分と塩分の両方が体外に排出されて、血圧の上昇が抑えられたと考えられます。

実験終了後、ラットを解剖して心臓の状態を調べました。すると、心臓の筋肉細胞が硬くなってしまう「線錐化」という現象が、みそ汁を飲んだラットでは進行が抑えられていることがわかったのです。これは、高血圧による心不全など心臓の障害を抑制することを意味します。

これらの実験から、みそ汁は食塩水に比べて高血圧になりにくいこと、腎臓や心臓の障害が起こりにくいことが、明らかになりました。

さらに上原先生たちは、人間ドックの受診者を対象に、みそ汁の摂取状況と、血圧や生活習慣病との関係を調査しました。調査対象は、東京都内にある病院の人間ドックを受診した、37歳から72歳の男性102名です。すでに生活習慣病で治療を受けている人は除きました。

被験者に、みそ汁の摂取頻度と食事の嗜好性について聞き取り調査を行い、人間ドックの検査結果との関連性を調べました。被験者全体の、みそ汁の摂取頻度の平均は1日1杯、食塩摂取量は1日8・6gでした。

1日3杯程度なら高血圧との関連性はない

食塩の摂取量が多い人(1日9g以上)では、家族内の高血圧の発症率が高い傾向にあり、肥満度の基準であるBMIや、肝機能値、血中の中性脂肪値が高い、という結果が出ました。

しかし、みそ汁の摂取頻度が高い人をそうでない人と比べても、高血圧の家族歴、本人の血圧、BMI、肝機能傭などに、差は認められなかったのです。

この結果から、上原先生たちは「みそ汁は1日3杯程度であれば、血圧との間に一定の関係は見られない」と結論づけました。

ただし、みそ汁を1日2~3杯以上飲む人たちは、たんばく質や脂質、食塩など、すべての栄養素が過剰気味の傾向が見られました。

これは、みそ汁を多く飲むような食習慣の人たちは、毎食しっかり食べていて、食事の全体量が多くなりがちなことが影響していると考えられます。

栄養過多になりがちな現代の日本人にとっては、1日1~2杯みそ汁を飲むような食事が、栄養素的にもバランスの取れた献立になると思います。

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