肥満を防いでコレステロールも下げてくれる「麦ごはん」

慈恵医大病院では昼食に必ず麦ごはん

東京慈恵会医科大学附属病院の食事といえば、「麦ごはん」。そういわれるくらい慈恵医大病院は、麦ごはんと縁の深い病院です。その端緒となったのは、慈恵医大病院の創始者であり、海軍軍医だった高木兼寛先生の大発見です。

明治時代、脚気(末梢神経障害や心不全を起こす病気)が大流行し、毎年1万人単位の人がこの病気で亡くなりました。そのころ、まだ脚気の原因は不明で、森鴎外(陸軍軍医)をはじめ、多くの医師が「伝染病説」を唱えるなか、食事に着目したのが高木先生でした。

当時の海軍の食事は、精白米と漬物に代表される炭水化物の多い食事。航海中に、多くの脚気患者を出しました。それに対して、外国船は、たんばく質の多い洋食にパン。脚気になる人は皆無でした。

こうしたことから、栄養のバランスに問題があると考えた高木先生は、その後、9カ月にわたる航海実験を行い、ビタミンB1の欠乏が脚気の原因であることを突き止めたのです。

ビタミンB1の多い食事をするようになって、海軍は脚気を撲滅しました。その立て役者の高木先生は、生涯ビタミンB1の多い麦ごはんを食べ続け、「麦飯男爵」と呼ばれました。

この高木先生にちなんで、慈恵医大病院では、昼食に必ず、大麦を混ぜた麦ごはんを出しています。

患者さんの反応は上々で、「退院後も麦ごはんにします」とか、「体調がよくなりました」という声をよく耳にします。

白米に比べ6倍以上も食物繊維が多い

麦ごはんには、ビタミンB1以外にも、さまざまな栄養が含まれています。その中で、最も注目したいのが食物繊維です。大麦には、白米の約20倍の食物繊維が含まれています。これを白米に3割混ぜた麦ごはんは、白米100%のごはんに比べ、6倍以上も食物繊維が多いのです。

食物繊維には、水に溶ける水溶性の食物繊維と、水に溶けにくい不溶性の食物繊維があります。

水溶性には、コレステロール値や血糖値の上昇をおさえる作用や、便を軟らかくして排泄を促す作用のあることがわかっています。一方の不溶性にも、腸の動きを活発にして、便通を促進する作用があります。

なお、頑固な便秘の人は、不溶性で無理に腸を動かすより、まず水溶性を多くとって、便が出るようになってから、不溶性もとるようにしたほうがいいといわれています。

穀類は、おしなべて不溶性が多いですが、大麦はいずれの食物繊維も豊富で、特に水溶性が多いのが特徴です。

ヘモグロビンA1cは8・4%から5・9%!

麦ごはんの健康効果が再び注目されたのは、福島刑務所の医務官、日向正光医師の報告でした。刑務所の食事の主食は、3食とも麦ごはんです。日向医師が、服役中の糖尿病患者109人の病状の経過を分析したところ、約85%に当たる92人に糖尿病の改善が見られました。

検査値も、劇的に改善しています。平均で、空腹時血糖値は184mg/dlから113mg/dlに、ヘモグロビンA1cは8・4%から5・9%に低下(ともに平均値)。インスリン注射をやめられた人が5人、血糖降下剤を中止できた人が17人もいたそうです。

ちなみに、福島刑務所の麦ごはんは、米と大麦の比率が7対3です。

慈恵医大病院が事務局を務める日本GI研究会の研究でも、麦ごはんは、白米に比べて、明らかに食後の糖の吸収を緩やかにし、血糖値の上昇をおさえることがわかりました。

この血糖値をおさえる作用は、主に大麦に含まれるβ-グルカンという水溶性の食物繊維によります。β-グルカンは、海藻などに多いネバネバ成分で、これが胃の中で食べ物と混ざり合うと、食べ物がゆっくり腸に送られ、消化吸収も緩やかになります。

肥満の予防にもつながる

反対に、消化のよいものは、小腸ですぐに吸収されるため、食べた後、急激に血糖値が上がります。すると、それを処理するためにインスリンが大量に分泌され、余った糖を脂肪細胞にため込んで肥満が進みます。

しかし、ゆっくり糖が吸収されれば、少ないインスリンで糖を処理できるため、血糖値の上昇をおさえるだけでなく、肥満の予防にもつながります。さらに、β-グルカンは、コレステロールの腸からの吸収もおさえるので、コレステロール値の低減にも役立ちます。

β-グルカンは、大麦の中心部にぎっしり入っています。米や小麦は粒の周囲に栄養分がついているため、精製すると削れてしまいますが、大麦は精製してもそれほどへらないので、健康効果が期待できるのです。

スポンサーリンク


  • このエントリーをはてなブックマークに追加