自分に必要な健康情報を適切に選ぶ「ヘルスリテラシー」

メディアにあふれる健康・医療情報

健康食品やダイエット、ストレスやうつ、患者や家族の生活や思いなど、メディアには健康や医療の情報があふれています。その中には、記事か広告か分からないもの、自分が持っている症状が病気だというもの、病気が治ったなど、実にさまざまなものがあります。

しかし、それを見たとしても、すぐに専門家に聞けるわけではありませんし、主治医にも聞きにくいものです。

そうした情報の中から、自分に合ったものだけ、信頼できる情報だけを引き出せればどんなにいいでしょう。それには身に付けるべき力が必要です。「ヘルスリテラシー」と言われるもので、健康を維持するため、取り戻すための意思決定に必要な情報を探し、理解し、活用する力です。

これが今、WHO(世界保健機構)を含めた世界の健康政策の中心となってきています。リテラシーとは、もともとは読み書きができる能力のことでしたが、その意味は広がり、自分に必要な情報を適切に選び、自ら「より良い意思決定」ができる力を指し示すようになっています。

その力があるかないかが健康を左右しますので、「健康を決める力」、「健康決定力」と言えるかもしれません。ただ、それを身に付けられる機会は少なく、方法も確立していません。

A型の人が1・2倍胃がんになりやすかったら

例えば、「血液型がA型の人は1・2倍胃がんになりやすい」という記事を読んだ場合、どうでしょうか? 遺伝するということか、いわゆる「A型の性格」だからなのか (血液型と性格の関連に科学的根拠はありません)、1・2倍とは大きい数字なのかなどを考えます。

血液型は変えられないので、胃がんの予防のために食塩を控えると決めたとします。そこからは、家族の協力を得たり、職場や外出先でも工夫が必要で、病気のある人は主治医とも相談が必要です。

周囲の理解やサポートがすぐに得られればいいのですが、全く得られない場合はどうでしょう? 食をめぐる社会や文化への対策を考える必要もあるかもしれません。健康は一人ひとりのライフスタイルと関係していますが、それは社会のあり方と密接に結びついています。「ヘルスリテラシー」では、コミュニケーションを通して環境を変える力も必要となるのです。

「知識」が「データ」を「情報」に変える

それではまず、情報とは何でしょうか。主に「データ」、「情報」、「知識」と3つの意味で使われています。

「データ」とは記号のことで、吉葉や文字などがあたります。A型の人の胃がんが「1・2倍」というのはデータですが、それが持つ価値あるいは意味を評価できなければ、単なる数字です。

それに対して、「情報」とは、「データ」+「価値」です。1・2倍かもしれないが、それほど大きな値ではないし(実はデータは日本のものではないという評価も可能です)、これを機に食塩の摂り過ぎを見直して、検診は必ず受けようといった意思決定に用いることができたとすれば、それは情報になります。

そして、この時に必要なのが「知識」で、「知識」が「データ」を「情報」に変えます。研究データの見方や胃がんを予防する方法についての知識がなければ、データを正確に評価できません。

「ヘルスリテラシー」にはある程度の科学的な知識も必要です。それが不足したままで判断することは危険で、その場合は知識を持つ人に聞けることが大切な力になります。

意思決定における満足度が健康状態を左右する

食生活や運動不足など、病気にかかりやすいライフスタイル等の要因はリスクファクターと呼ばれます。もし病気になっても、「くすりは反対から読むとリスク」でもあるように、医療は基本的にはリスクを冒すことで成立しています。このようなリスクについての情報を理解して、納得した意思決定をしたいものです。

では、意思決定とは何でしょうか。2つ以上の選択肢から1つ以上を選ぶことです。そして、それが必要になるのは、そのままにできない問題が生じたときです。

例えば、病気が見つかった場合、痛みや苦しみ、生命の脅威、仕事や家庭生活への影響、ケアの必要性などの問題に直面します。そのために、手術するのか、いつするのか、方法はどれにするかなどの対応が求められます。

問題を解決するために必要なことは、①選択肢は幾つあるのかのリストを作り、②それぞれのメリット(ベネフィット)とデメリット(リスク)をすべて知り、③最も納得がいく選択肢を決めることです。

後悔しない満足のいく意思決定は、その後の気持ちや行動を通して健康状態に良い影響を与えるという研究もあります。健康は決め方にもよるのです。

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