「低出力超音波パルス治療」にも弱点が

照射位置が正確なら体の奥の骨にも有効

簡便でしかも有効性の高い超音波骨折治療法ですが、弱点がないわけではありません。体表にある骨に比べ、体の奥にある骨では効果が出にくいとされていました。

「その理由として、大腿骨頚部のように皮膚から骨までの距離が長いと、体内の軟部組織にエネルギーが吸収されてしまい、骨折部に超音波が届いていないことが考えられました。

実験を行ったところ、照射する超音波は拡散することなく細いビームとなって直進するので、体表に近い骨なら多少治療ヘッドの位置がずれていても骨に照射されますが、体の奥にある骨の場合はヘッドの位置が正確でないと、超音波が当たらないことがわかりました。

そこでターゲットを定めて照射したところ、体表に近い骨折の癒合率と同様の成績が得られました。現在、確実に超音波が当たっているかを確認できる装置を研究中です」

大腿骨頚部骨折は高齢者が寝たきりとなる大きな原因で、骨折により外部との接触も少なくなるため認知症を引き起こす原因にもなっています。超音波により骨折の治癒期間が短縮されれば、寝たきりだけでなく認知症の予防につながることも期待されます。

さらに松下医師は、骨折治療における「骨延長術」や「骨切り術」についても有効性を明らかにしており、先進医療として認められるよう、申請の準備をしています。

「骨延長術とは、足の骨を長く伸ばして身体のバランスを改善することを目的に行う手術です。麻酔下で人工的に骨折させ、そこに生じる仮骨を少しずつ引き離しでいくことで、仮骨が刺激に反応して骨を新しく作ります。

外傷や疾病による骨の欠損や先天疾患などに用いられますが、超音波を照射すると仮骨の形成や、骨密度の増加にも効果があることがわかっています。

骨切り術は変形性膝関節症などが対象疾患で、骨の変形や関節の異常に対して、骨を切って骨の向きを調整していく手術。骨癒合が遅いことが課題とされており、超音波の応用が求められています」

治癒期間の短縮化を安全で簡便な方法で実現する超音波骨折治療法は、骨折治療以外の応用として腱や靭帯の断裂、椎間板の障害などに対しての研究も進められています。先進医療の対象が拡大され、さまざまな治療に活用されることが期待されています。

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