自分に一番楽な姿勢で出産できる「助産院のようなクリニック」

安心して自然分娩ができる場所を!

東京、築地。ここに2010年6月、「助産院のようなクリニック」が開院しました。聖路加産科クリニックです。

助産院での出産、あるいは自然分娩を望む人は増えています。一般的な産婦人科での出産よりも、自分の出産体験を大切にしたいと考える女性が多くなっているのでしょう。陣痛促進剤の使用や会陰切開、分娩台に上ることに抵抗を感じる女性も多い。

とはいえ、そんな女性の一番の心配は「もしお産の最中に何かあったらどうしよう」ということではないでしょうか。実際、分娩中に急に母子が異常な状態になることはあります。

聖路加産科クリニックはそんな女性の声に応えるために開設されました。聖路加国際病院の敷地内に、聖路加看護大学との共同事業として設立。妊娠中や出産時に母子に異常が起こったときには、速やかに病院での診察・治療が受けられのです。

「ここでは、妊娠中や出産時に異常が起こりにくいと診断された、口-リスクな妊婦さんを受け入れ、育てています。母子ともに安全であることが大前提。異常を予防するために体と心を妊娠中に養生していただきます」

こう話すのはクリニックの副所長、堀内成子さん。リスクを無視して自然分娩を行い、悲しい結果につながることは避けたい。また、当初はローリスクでも途中から血圧が上がるなど、不調を起こす人もいます。その場合は病院での出産に切り替えてもらいます。

楽な姿勢で家族に囲まれて産む

LDRと呼ばれる分娩室は和室。低めのベッドの周りに、天井からぶら下がる太い産み綱、バルーン、分娩椅子、壁に取り付けられた握り棒など、子どもの遊戯室のようなものがたくさんあります。分娩台もなければ手術室のような照明もない普通の部屋です。ここでどうやってお産をするのでしょう?

「皆さん、自分に一番楽な姿勢で出産されるんです。ベッドの上のこともあれば、綱につかまってのこともあります。陣痛を促したり赤ちゃんが降りてきやすいようにバランスボールを使ったり、階段昇降をしたりするんですよ」

もちろん、必要時に使用する医療機器が隣室にそろっていますし、分娩時には医師も立ち会います。お産に集中できるように照明をおとした暗めの部屋で、妊婦さんは安心して、自分流のお産ができるのです。多くの家族がパートナーや上の子の立会い出産を希望しています。

「妊娠・出産を家族みんなの貴重な体験にしたいと思うのでしょう。少子化の影響もあるでしょうね。私どものクリニックでも妊産婦さんご本人のご希望にできるだけ応えるようにしています。助産師とパパ、そしてお兄ちゃんが一緒に、生まれたばかりの妹さんのへその緒を切ることもありますよ」

初診時から4~5人の助産師さんがチームを組んで、出産から産後のケアまでずっと面倒を見てくれる。だからこそ妊婦さん一人ひとりが希望する出産、ケアが可能なのです。

出産後に孤独なママにはショートステイで安寧な時間を

核家族で、仕事を持つ女性が多い現状では、産んでからの不安も深刻。妊婦が晩産化したため、老親からの支援も難しい。大家族制や地縁が残っていたころは、祖母や地域の経験者に尋ねることができました。今はそうはいきません。

孤独な育児が産後うつ症状を助長させます。聖路加産科クリニックでは、出産後にサポートを必要としているママを希望するだけ受け入れているのです。

「自宅に帰って実際にやってみると授乳がうまくいかなかったり、帝王切開や分娩後の回復がゆっくりな人もいます。孤独な育児で落ち込むお母さんもいらっしやいます。ショートステイをおすすめして、いろいろな問題を一緒に解決していくようにしています」

と、堀内さん。助産師さんと数日一緒に過ごして、元気を取り戻して帰っていくお母さんも多い。

クリニックでは妊娠中をさわやかに過ごすためのマタニティビクスやトリートメントなどがあり、さらに産後に、赤ちゃんとママが一緒にできるヨガ、産後の回復を促すクラスなど、体にも心にもプラスになるクラスが毎日開かれています。妊娠前女性のクラスや赤ちゃん連れのイベントもあり、長い目で見たサービスが充実しているのです。

「私たち助産師は、お母さんと赤ちゃん、そしてご家族がもともと持っている力を見出して、その力を育んでいく、そのサポートをするだけです」

堀内さんの笑顔はたのもしい。

赤ちゃんとママを温かく見守る環境

聖路加産科クリニックはキリスト教精神に基づいて設立され、どの部屋からも礼拝堂の十字架が見える。火曜日と木曜日には、クリニック内で牧師による誕生感謝礼拝が行われます。

病室には和室と洋室がある。和室の階には和風の、洋室の階には洋風のラウンジがあり、木製の格子越しに大き
な窓から漏れ入る光が心地よい。お兄ちゃんやお姉ちゃんが遊べるスペースもある。母子同室で、トイレはガラス張り。トイレの中からも赤ちゃんの様子がよくわかります。

クリニックの所長であり、聖路加国際病院の女性総合診療部・医長でもある山中美智子先生は次のように話します。

「お産は何が起こるかわからないもの。100パーセント大丈夫ということは絶対に言えません。万全の態勢で臨んでも、最後の最後で自然分娩が無理になることもあります。だから世の中の風潮や雰囲気に流されないで、自分の状態をよく知って、賢明な選択をしてほしいですね。そのためのお手伝いをすることは厭いませんから」

静かに落ち着いて、安心して出産に臨める環境がここにはあるのです。

スポンサーリンク


  • このエントリーをはてなブックマークに追加